TikTok Shopの「潮目」が変わった12月
「TikTokでモノを売るなら、中高生向けのプチプラアイテムでしょ?」 もしあなたがまだそう考えているなら、それは大きな機会損失を生んでいる可能性があります。
今回入手した2025年12月上半期のデータは、これまでのTikTok Shopの常識を覆すものでした。ランキングの上位には、1万円を超えるセット商品や、6,000円級の生鮮食品、高単価な美容家電が並んでいます。
視聴者は、ただ暇つぶしに動画を見ているのではありません。
彼らは、動画から伝わる「圧倒的な価値」や「シズル感」に対して、たとえ高額であっても財布の紐を緩める準備ができているのです。
本記事では、このデータを「カテゴリー(市場全体)」と「商品(個別の勝ち筋)」の2つの視点から分析し、明日からのビジネスに使える具体的な戦略へと落とし込んでいきます。
ランキングの分析に使用したツール
今回の分析には、TikTokショップ専門の分析ツール【Kalodata】を使用しています。
このツールでは、各カテゴリの売上推移、商品別のランキング、ショップごとの販売実績など、かなり詳細なデータを見ることができます。
また、Kalodataをお申し込み時にお使いいただけるお得なクーポンコードを発行・配布しています。
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カテゴリー分析から見る「市場の歪み」
まずは個別の商品を見る前に、市場全体のマクロな動きをカテゴリーランキングで見ていきましょう。※カテゴリーのランキングは直近30日間(11/16〜12/15)のデータです。
ここで重要視して欲しいのが、単に「売上総額」が大きいジャンルよりも、1店舗あたりの売り上げです。
1. 競争がすでに激化してきたアパレル市場

レディースウェア・インナー(Kalodata)
ランキングデータを見ると、売上高1位は「レディースウェア・インナー(6億円)」、2位は「美容・パーソナルケア(6億円)」です。数字だけ見れば、依然として巨大な市場です。
しかし、その裏側にある「ショップ数」と「成長率」に注目してください。
ショップ数: 694店舗(レディースウェア)
成長率: -4.82%(前期間比)
市場には約700ものショップがひしめき合いが起きている状態です。
何の戦略もなくアパレルに参入するのは、すでに難しいゲームになってきているとも言えます。
とはいえ、TikTok Shopで買い物するユーザー層は人口全体で比較するとまだまだアーリー層です。供給の増加とともに、需要も増加していくのでまだまだ参入余地はあるとも考えられます。
2. ブルーオーシャンの食品市場
一方で、異常な数値を叩き出しているのが8位の「生鮮・冷凍食品」カテゴリーです。

生鮮・冷凍食品(Kalodata)
ショップ数: 50店舗
平均売上高: 424万円/店舗
この数字の凄まじさがお分かりでしょうか? レディースウェアの1店舗あたりの平均売上が89万円であるのに対し、食品は424万円。実に約4.7倍の効率で稼いでいます。
ショップ数がわずか50店舗しかないということは、競合が極端に少ないということです。冷凍配送などの物流ハードルがあるため参入障壁は高いですが、そこさえクリアできれば、「出したもん勝ち」状態が形成されつつあります。
「アパレルで消耗戦をするか、食品で独占戦をするか」。 データは、明らかに後者の優位性を示しています。
12月(上半期)の商品ランキング分析(10位〜6位)
ここからは、具体的な商品ランキング(売上高順)を分析していきます。まずは10位から6位です。
※商品毎のデータは12月の上半期(12/1〜12/15)のデータです。

12/1〜12/15の商品毎の売上高(Kalodata)
【ランクイン商品】
7位: Heartenコードレス掃除機(売上678万円/成長率+30.9%)
10位: 電動スビンスクラバー(売上606万円)
「大掃除」という強制イベント
なぜ、このタイミングで掃除用品がバカ売れするのか?答えはシンプルに、12月の「大掃除」需要と考えられます。
しかし、単に需要があるだけでは売れません。TikTokというプラットフォームの特性がカギを握っています。
TikTokでは、「Before/After」が明確な動画が非常に好まれます。
汚れた床(Before)
→電動ブラシを一撫でする(Action)
→ピカピカになる(After)
この一連の流れは、視覚的な快感(ASMR的要素)を伴うため、広告臭を感じさせずに視聴維持率を高めることができます。そして、視聴者は「大掃除しなきゃ…面倒だな」という潜在的な課題を抱えています。
そこに「これなら楽に解決できる」というソリューション(解決策)が流れてくる。
季節の悩みと、動画の解決策がパズルのようにハマった時、商品は爆発的に売れます。
商品ランキング分析(5位〜1位)
いよいよベスト5の分析です。ここでは、高単価商品が売れるための「条件」が見えてきます。
【第5位】SaiKuCo 掛け布団(売上735万円)

データ元:Kalodata
生存欲求に基づく「実需買い」
11月までは「おしゃれ」や「映え」が優先されましたが、12月の寒波到来とともに、消費者の優先順位が「寒さを防ぐ」という生存欲求(実需)にシフトしました。
このような機能的商品は、派手な演出よりも「暖かさ」を誠実に伝えるレビュー動画がCVR(成約率)を高めます。
【第4位】松屋 新春福袋2026(売上846万円)

データ元:Kalodata
ブランドの信頼と「まとめ買い」
牛丼チェーン「松屋」の福袋です。 EC、特にTikTokのような新興プラットフォームでは「本当に届くのか?」「味は大丈夫か?」という不信感が購入のハードルになります。
しかし、ナショナルブランドである松屋には、すでに強固なブランドへの信頼があります。 そこに「福袋」という、年に一度の免罪符(お得だから買ってもいいという言い訳)が加わることで、4,980円という価格でも即決されています。
【第3位】Wavytalk ヘアアイロン(売上1,160万円)

データ元:Kalodata
「ギフト経済」と絶妙なプライシング
注目すべきは、前期間比+160.1%**という驚異的な成長率です。
美容家電は、通常は自分用に買うものですが、12月は違います。「クリスマスギフト」としての需要が乗っかってきます。
ここで重要なのが「約9,000円〜1万円」という価格設定です。
3,000円だと、プレゼントとしては少し安っぽい。
3万円だと、高すぎて手が出ない。
1万円弱は、「高見え」するけれど、パートナーや自分へのご褒美として許容できるライン。
この「ギフトとしての最適価格(スイートスポット)」を突いたことが、爆発的な伸びの要因に繋がっていると考えられます。
【第2位】ズワイガニ 600g(売上2,103万円)
圧倒的な「シズル感」とブルーオーシャン

データ元:Kalodata
売上2,000万円超え。第1章で触れた「食品ブルーオーシャン」の象徴です。 カニは、動画マーケティングにおいて最強の商材の一つです。
殻を剥いた瞬間に溢れる身、湯気、そしてそれを食べる演者の表情。
これらすべてが「シズル感」として、画面越しに食欲と購買意欲を強烈に刺激します。
テキストや静止画では伝わらない「鮮度」が、動画なら伝わる。食品ECとTikTokの相性の良さを証明する事例です。
【第1位】UHA味覚糖 年末特大セット(売上2,157万円)

データ元:Kalodata
「Visual ROI(視覚的な対費用効果)」
栄えある第1位は、UHA味覚糖のお菓子詰め合わせセットでした。 価格は1万円。
駄菓子やグミの詰め合わせに1万円です。普通に考えれば「高い」と感じるでしょう。しかし、なぜこれが一番売れているのでしょうか?
それは「82種類」という圧倒的なボリューム感(見た目)にあります。
ショート動画でこの商品が紹介される時、画面には「山のようなお菓子」が映し出されます。 それを見た瞬間、視聴者の脳内では次のような処理が行われます。
「すごい量!」(驚き)
「これ全部で1万円?」(価格の確認)
「1個あたりで計算したら安いかも?」(正当化)
これをマーケティング視点では「Visual ROI(視覚的な投資対効果)」と呼びます。
動画というフォーマットにおいては、「物理的な量・大きさ」こそが、最も分かりやすい「価値の証明」になります。
ちまちました商品を安く売るのではなく、まとめてドカンと見せる。そのインパクトが、1万円という心理的ハードルを破壊したのです。
2026年に向けた「3つの勝ち筋」
さて、ここまでの分析を踏まえて、我々セラーやマーケターは今後(2026年以降)どう動くべきでしょうか? データから導き出される、具体的な3つの戦略を提言します。
勝ち筋①:セット売りへの転換
「TikTok売れ=低単価」という思考を捨ててください。 1位のお菓子セットが証明した通り、ユーザーは**「一撃で満たされる体験」**を求めています。
アパレルなら: Tシャツ1枚ではなく、「全身マネキン買いセット」
コスメなら: リップ1本ではなく、「冬のデートメイク完成BOX」
雑貨なら: 単品ではなく、「新生活準備コンプリートセット」
このように商品をバンドル化し、「ボリューム」と「これ一つでOKという安心感」を可視化してください。
これにより客単価が上がり、広告のROAS(費用対効果)も劇的に改善します
勝ち筋②:カレンダーイベントの「先食い」
今回のランキングは「12月前半」のものでした。売れているのは「大掃除」「クリスマス」「正月(カニ・福袋)」です。
つまり、「その月に消費者がやらなければならないこと(強制イベント)」に関連する商品が勝っています。
1月: 初売り、ダイエット・健康、成人式、受験応援
2月: バレンタイン、乾燥対策、花粉症対策の走り
今売れている商品は、1ヶ月以上前から仕込まれています。
「今流行っているもの」を追うのではなく、来月、日本人が直面する課題を予測し、そこに対するソリューション動画を今のうちに仕込んでください。
勝ち筋③:「解決」か「シズル」か、動画の軸を定める
今回のランキングに入った商品の動画パターンは、大きく2つに分類できます。
マイナスをゼロにする「解決型」
・掃除機、毛玉取り、コンプレックス解消コスメなど。
・「Before/After」を見せ、課題解決の快感を訴求する。ゼロをプラスにする「シズル(欲望)型」:
・カニ、お菓子セット、ファッション、ジュエリーなど「圧倒的な物量」
・「美味しそうな断面」「憧れの世界観」を見せ、ドーパミンを刺激する。
あなたの商品はどちらのタイプでしょうか?
「解決」なら徹底的に悩みに寄り添う。「シズル」なら徹底的に映えさせる。この「動画の軸」を明確にするだけで、視聴者の反応率は劇的に変わります。
TikTok Shopは「企画」で勝負する時代へ
今回の12月ランキング分析から見えたこと。
それは、TikTok Shopが単なる「安売りのプラットフォーム」から、「企画力と演出力があれば、高単価な価値でも十分に届くプラットフォーム」へと進化したという事実です。
競合のいないニッチなカテゴリー(食品など)を狙う。
単価を恐れず、セット売りで「視覚的なお得感」を作る。
季節の文脈(コンテキスト)に合わせた動画を作る。
この3つを意識すれば、2026年のTikTok商戦でも十分に勝ち抜くことができるはずです。
データは嘘をつきません。しかし、データをどう読み解き、どう行動に移すかで、ビジネスの結果は180度変わります。
ぜひ今回の分析を、あなたのビジネス戦略に役立ててください。
ランキングの分析に使用したツール
今回の分析には、TikTokショップ専門の分析ツール【Kalodata】を使用しています。
このツールでは、各カテゴリの売上推移、商品別のランキング、ショップごとの販売実績など、かなり詳細なデータを見ることができます。
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