動画の制作会社が「内製化のやり方」を書くのは、商売としては筋が悪い話です。お客様が自分でできるようになれば、外注は減りますから。
それでもこの記事を書いているのは、内製化の相談が明確に増えているからです。そして——ここが本題なのですが——きちんと設計せずに内製化に踏み切った会社の多くが、半年後には投稿が止まり、結局また外注に戻ってくる。そのときには社内に「うちには無理だった」という空気だけが残っていて、再スタートのハードルが上がっています。これは弊社にとっても、ご相談いただく企業にとっても、あまり幸せな結末ではありません。
弊社LEAD ONEは福岡でショート動画制作とTikTok運用代行をしていますが、同時に内製化支援というメニューも持っています。両方の現場を見てきた立場から、内製化がどこで折れるのか、どう設計すれば続くのかを整理しました。「内製化すべきかどうか」の判断そのものについてはTikTok運用の内製と外注を比較した記事にまとめているので、まだ迷っている段階の方はそちらを先に読んでいただくのが早いと思います。この記事は、内製化すると決めた後の話です。
動画制作の内製化がうまくいかない典型パターン

相談をいただく中で、崩れ方にはかなりはっきりした型があります。
もっとも多いのが「担当者一人に全部乗せる」型です。 企画も撮影も編集も投稿も分析も、若手のSNSに詳しそうな社員が一人で抱える。最初の1ヶ月は勢いで回ります。2ヶ月目に本業が忙しくなって週2本が週1本になり、3ヶ月目には「今週は無理でした」が続く。担当者本人のモチベーションの問題にされがちですが、これは構造の問題です。ショート動画1本には、企画・台本・撮影・編集・投稿・数値確認まで含めると、慣れていない人で3〜5時間はかかります。週2本なら月に30時間前後。他の仕事を持ったまま吸収できる量ではありません。
次に多いのが「機材から入る」型。 カメラと照明とマイクを揃え、編集ソフトを契約し、いざ撮ろうとして手が止まる。何を撮るかが決まっていないからです。正直に言うと、弊社も自社アカウントを始めた頃は同じ失敗をしました。機材を良くすれば良い動画になるはずだと思っていた時期があります。実際に効いたのは、機材ではなく「毎週この時間に撮る」という枠を先に押さえることでした。
3つ目は「品質基準を外注時代のまま持ち込む」型です。 制作会社が作った動画を見慣れていると、自社で撮った1本目が見劣りして当然です。そこで「これは出せない」と判断してしまう。ところがショート動画の世界では、作り込まれた映像より現場感のある素朴な動画のほうが伸びることが珍しくありません。公開しない動画の品質は、定義上ゼロです。 ここで止まる会社はかなり多い。
もう一つ、あまり語られない崩れ方があります。成果の見方を決めずに始めてしまう型です。再生数が伸びない週があると「意味があるのか」という声が社内から出る。反論するための材料がないので、なんとなく熱が下がって終わります。
内製化の前に決めるべき3つの前提

体制を作る前に、経営側で決めておくことが3つあります。ここが曖昧なまま現場に落とすと、上のパターンをほぼなぞります。
1つ目は目的です。 「SNSをやったほうがいいらしいから」で始まった内製化は、ほぼ確実に続きません。採用の応募を増やしたいのか、店舗の来店を増やしたいのか、既存顧客との接点を作りたいのか。目的によって撮るべき内容も、見るべき数字も変わります。九州の企業様だと、採用目的での内製化のご相談が体感でいちばん多い印象です。地元での知名度はあるけれど若手の応募が来ない、という課題とショート動画は相性が良いためだと思います。
2つ目は撤退ラインと判断時期です。 「3ヶ月やって、この数字が動かなければ外注に切り替える」と先に決めておく。これがないと、うまくいっていない状態がずるずる続きます。逆に決めておけば、担当者は「今は試している期間だ」と割り切って動けます。
3つ目は、社内での位置づけです。 動画制作を担当者の業務時間に正式に組み込むのか、それとも「余裕があるときにやる仕事」にするのか。後者にした時点で、優先順位は常に最下位になります。月30時間なら、それは人件費として実在するコストです。予算として認識しておくべきものだと考えています。
内製化する範囲の決め方——全部を社内でやらない

ここが実務上いちばん重要なところです。内製化を「全工程を自社でやること」だと定義すると、成功率は大きく下がります。
動画1本の工程を分解すると、おおよそこうなります。
| 工程 | 社内でやる難易度 | 外注しやすさ |
|---|---|---|
| 企画・ネタ出し | 低(現場の情報が最大の武器) | しにくい |
| 台本づくり | 中 | しやすい |
| 撮影 | 低〜中(スマホで十分なことが多い) | しにくい(都度の立ち会いが必要) |
| 編集 | 高(習得に時間がかかる) | しやすい |
| 投稿・ハッシュタグ設計 | 低 | しやすい |
| 数値分析・改善 | 中〜高 | しやすい |
この表を眺めるとわかりますが、社内でしかできないのは企画と撮影です。自社の商品や現場、働いている人のことを一番わかっているのは社内の人間で、これは外注では埋まりません。逆に編集は、習得コストが高いわりに外注市場が成熟していて、素材支給の編集のみなら1本5,000円〜3万円程度で頼めます。
弊社が内製化のご相談を受けたときにまずお勧めするのは、「企画と撮影は社内、編集は外注」というハイブリッド型です。これなら担当者の負荷は1本あたり1〜2時間まで落ちます。週2本でも月10時間程度。本業と両立できる水準です。編集を社内に取り込むのは、投稿が習慣として定着してから考えれば十分間に合います。
実際、この形で始めた企業様は投稿の継続率が明らかに高い。逆に最初から全工程を抱えた企業様は、3ヶ月目の壁を越えられないことが多いというのが率直な実感です。
内製化の進め方や体制設計の考え方は、弊社の資料にもまとめています。社内で検討を共有する際の材料としてお使いください。 👉 無料資料をダウンロードする
続く体制の作り方:人・機材・時間の現実的な設計

範囲が決まったら、次は体制です。
人については、最低2名を確保してください。 一人体制は、その人が繁忙期に入った瞬間に止まります。理想は「企画を出す人」と「撮る人」を分けること。同じ人がやってもいいのですが、二人が関与している状態を作ると、片方が忙しいときに片方が引っ張れます。加えて、決裁者を1名決めておく。公開してよいかの判断が現場で止まるケースが本当に多いためです。
機材は、最初はスマートフォンで構いません。 これは手抜きの提案ではなく、実務的な結論です。近年のスマホのカメラはショート動画には十分すぎる性能があり、縦型で撮るならむしろ扱いやすい。追加するなら、優先順位は「音」→「光」の順です。1万円前後のピンマイクと、5,000円程度のリングライト。この2つで、視聴維持率に効く要素はかなり押さえられます。高価なカメラを買うのは、投稿が定着してからで遅くありません。
時間は、枠で押さえます。 「毎週水曜の14時から2時間は撮影」と決めてカレンダーに入れる。まとめ撮りができるなら、月に1回半日を確保して4〜8本分の素材を撮ってしまうほうが現実的です。撮影のたびに準備と片付けが発生するので、回数を減らすほど1本あたりのコストは下がります。
企画のストックを切らさない工夫も要ります。ネタが尽きて止まる会社は多いのですが、これはショート動画の企画の作り方で紹介しているような「型」を持っておくとかなり緩和されます。毎回ゼロから考えるのをやめて、いくつかのフォーマットを使い回す。台本づくりに不安があればショート動画の台本の書き方も参考になるはずです。
内製化にかかる本当のコスト

「外注は高いから内製化する」という動機は自然ですが、実際に計算すると差が想像より小さいことがあります。ここは冷静に見ておいたほうがいい部分です。
月8本を想定して、ざっくり比べてみます。
| 項目 | フル内製 | ハイブリッド(企画撮影は社内・編集外注) | 運用代行に外注 |
|---|---|---|---|
| 担当者の工数 | 月30〜40時間 | 月10〜15時間 | 月2〜3時間(確認のみ) |
| 人件費換算(時給3,000円想定) | 9〜12万円 | 3〜4.5万円 | 0.6〜0.9万円 |
| 外部支払い | 編集ソフト等 月1万円前後 | 編集費 4〜16万円 | 月15万円〜 |
| 立ち上げ期の学習コスト | 大 | 中 | ほぼなし |
| ノウハウの蓄積 | 社内に残る | 社内に残る | 残りにくい |
人件費を時給換算に入れると、フル内製が劇的に安いわけではないことが見えてきます。内製化の本当の価値はコスト削減ではなく、「自社で撮れる状態」が資産として残ることにあります。ここを取り違えると、期待した削減効果が出ずに社内で説明がつかなくなります。
外注側の費用構造をもう少し細かく知りたい場合は、ショート動画の外注費用の内訳に価格帯別の相場をまとめています。比較の土台として見ておくと判断しやすくなるはずです。
立ち上げ最初の3ヶ月でやること

計画を立てても、初動でつまずくと戻れません。現実的な進め方を月単位で並べます。
1ヶ月目——決めることに集中する。 目的、担当2名、撤退ライン、撮影の曜日と時間、外注する工程。ここで動画を作ろうと焦らないことです。並行して、自社と近い業種のアカウントを10個ほど見て、伸びている動画の型をメモしておく。これが企画のストックになります。
2ヶ月目——量を出す。 品質基準は一旦下げて、決めた本数を出し切ることだけを目標にします。この時期の目的は「回る仕組みかどうかの検証」であって、成果ではありません。撮影から投稿までの流れで詰まる箇所が必ず見つかるので、そこを潰していきます。縦型動画の作り方の基本を押さえておきたいときは縦型動画の作り方ガイドが実務の手順に沿っています。
3ヶ月目——数字を見て型を絞る。 再生数だけでなく、視聴維持率と保存数を見ます。伸びた動画と伸びなかった動画の差を言語化して、勝ちパターンを2〜3個に絞る。ここまで来ると、次の3ヶ月は明らかに楽になります。
弊社が支援したある店舗業の企業様では、この進め方で4ヶ月かけてフォロワーが2.4万人まで伸びました。特別なことをしたわけではなく、撮影の枠を固定して、伸びた型を繰り返しただけです。逆に言えば、そこまで地味な話でもあります。
内製化が向いていない会社の条件

ここは正直に書きます。以下に複数当てはまる場合、内製化は一度見送ったほうが結果的に早いことが多いです。
- 担当者を業務時間内で確保できない(「空いた時間で」しか出せない)
- 決裁のラインが長く、公開までに3人以上の承認が必要
- 繁忙期の波が大きく、月によって全く時間が取れない
- 3ヶ月以内に成果を求められている(内製の立ち上げは通常それ以上かかります)
- 動画を採用や集客の主要導線として位置づけている(止まったときの損失が大きい)
とくに4つ目と5つ目が重なる場合、外注から入って成果を先に作り、並行して内製に移していくほうが安全です。弊社でも「1年目は運用代行、2年目から段階的に内製へ」という形で進めている企業様がいます。順序としてはこちらのほうが失敗しにくい。
自社がどちらに当てはまるか判断がつかない、あるいは「一部だけ社内でやりたい」といった中間の設計をしたい場合は、状況をうかがったうえで一緒に線を引くこともできます。福岡・九州を中心に、内製化支援と運用代行の両方をご用意しています。
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なお、外注を選ぶ場合の会社の選び方や費用感についてはTikTok運用代行の完全ガイドに判断軸をまとめてあります。
よくある質問

Q. 内製化に必要な人数は最低何人ですか。 A. 2名を推奨しています。1名でも物理的には回りますが、その方が休んだり繁忙期に入ったりした時点で止まります。企画を出す人と撮る人を分け、公開可否を決める人を1名決めておく形が現実的です。
Q. 編集ソフトは何を使えばいいですか。 A. スマホの無料アプリで始めて問題ありません。テロップと簡単なカットができれば、ショート動画の初期には十分です。パソコンでの本格的な編集ソフトは、社内で編集まで担うと決めてから検討すれば間に合います。
Q. 効果が出るまでどのくらいかかりますか。 A. 内製の立ち上げでは、投稿が安定するまでに2〜3ヶ月、数値が動き始めるまでにさらに2〜3ヶ月を見ておくのが現実的です。半年程度の視野で撤退ラインを設定しておくと、途中でぶれにくくなります。
Q. 撮影は勤務時間中にやるべきですか。 A. はい。業務時間外や「空き時間」に置いた時点で、優先順位が下がって止まります。月10〜30時間の業務として正式に組み込むことをお勧めしています。
Q. 途中から内製化に切り替えることはできますか。 A. できます。むしろ外注で成果の出る型を作ってから内製に移すほうが、社内に手本があるぶん立ち上がりが早い傾向があります。運用代行を受けている間に、企画会議へ社内の担当者に入ってもらうところから始める形が多いです。
Q. 内製化支援では具体的に何をしてもらえますか。 A. 内容は企業によって変わりますが、体制設計、撮影・編集の指導、企画の型づくり、数値の見方の共有などが中心です。弊社の場合は月5万円〜でご相談を承っています。全部を任せる運用代行とは別の位置づけのメニューです。
Q. 動画のクオリティが低くても投稿していいのでしょうか。 A. 立ち上げ期は投稿を優先してください。ショート動画では作り込みより現場感が評価されることが多く、公開しない限りデータも溜まりません。ただし、誤情報や権利関係の確認だけは最初から徹底してください。
Q. 福岡の企業でも支援を受けられますか。 A. 弊社は福岡・天神を拠点にしており、九州圏の企業様の支援を多く手がけています。対面での撮影同行や社内向けのレクチャーも対応可能です。
まとめ

動画制作の内製化は、機材や編集技術の話ではなく、体制と範囲の設計の話です。要点をもう一度整理します。
- 崩れ方には型がある。一人体制・機材先行・品質基準の持ち込み・指標の未定義
- 始める前に、目的・撤退ライン・社内での位置づけを決めておく
- 全工程を抱えない。企画と撮影は社内、編集は外注から始めるのが現実的
- 人は2名、機材はスマホと音から、時間は枠で押さえる
- コスト削減を主目的にすると期待外れになる。資産として残ることが価値
- 立ち上げは3ヶ月単位で、1ヶ月目は決めることに集中する
内製化と外注は対立するものではなく、工程ごとにどちらを選ぶかという話だと考えています。自社の状況に合わせて線を引ければ、続く体制は作れます。
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